Someday ~私がいた夏~
 たぶん、どうしようもない気持ちが顔に出てたと思う。
これ以上何か言おうとするとガマンしてる涙がこぼれてしまいそうで、私は黙り込んだ。

 康紀さんは、少し考えたあと優しい声で言った。

「なんでもないことじゃないよ。」
「……。」
「俺の素直な気持ちね? まだ出会ってからそんなに回数会ってるわけじゃないし、お互いのことってあんまりわかってないと思うんだよね。こうやって会って話してるとすごく楽しいし、正直もっといろんなこと話したいなって気持ちになるんだよ。
 ……で、まぁ手をつないだのは、俺がそうしたいと思ったからで…。誰とでもつなぎたいってわけじゃない。
 桜ちゃんだったから、そうしたいと思った。」
 
 ゆっくりと1つ1つ言葉を選びながら話してくれる康紀さんがとてもステキに見えた。 
「あ、ありがとうございます。」
「あんまり焦らないで、ゆっくりわかっていこう。また冬休みには会えるし。」
「そうですね。早く帰りたいなぁ。」
「あはは。俺もなるべく時間作るようにするよ。帰ってきたら電話くれる?って夏みたいにお店に来てくれてもいいんだけど?」
「それ…からかってます?」
「ん~ちょっとだけ?」
「えっ…それひどくないですか?」

 少し怒って、でも、また会えると思ったら顔は嬉しくて…ふくれっ面なのに笑ってしまった。
「あはは、その顔、どっちだかわかんないなぁ~。でも今笑ってるよね?」
「あはは。そんな混ざった顔してます?」
「うん。でもやっぱり笑ってるほうがかわいいよ。」

 そう言って右手で頭をなでてくれた。
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