春色最中のコンチェルト
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「んー…」

携帯の細かい振動で目が覚めた。

時刻は午前六時。

「もしもぉし…」

寝ぼけ声でも仕方がない時間だ。


『あ、最中?母さんよ母さん』

「母さん!?」


ガバッと身体を起こした瞬間、頭をテーブルに強打した。

ついでに完璧に目が覚める。

「あ、おはよう母さん…」

『あらぁ大丈夫ー?何かすごい音したけど』


この暢気な声に昔は苛立ったものだ。

今はこれに安らぎを覚えるほどなのに。

「大丈夫よ。ところで何?」

落ち着け自分。

たぶん通知の内容は母さんたちは知らないはずだ。


ところが人生うまくいかない。


『受験、残念やったのね。まぁでも、あんたも里帰りやなんて母さん嬉しいわー』

「嬉しくないよ…」


やっぱりイライラする。

人の苦しみなんかてんで分からないんだから。


『そうなん?昨日、繭ちゃんから聞いたんよー。やからそっちに青磁くんが向かったわ』


耳を疑った。

久しぶりの関西弁だから聞き間違えたのかもしれない。


「…え?」

『柳さんとこの青磁くんが、そっちに向かってんよ』

「せ…青磁くんが?」


さぁっと顔から血の気が失せていくのが分かった。


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