テンポラリー・ジョブ
「あっ! そうだ。机の中に懐かしいもの見つけたぞ」

高島は、スーツの内ポケットから一枚の写真を取り出した。

その写真を大輔に見せた瞬間、
「みんな、若いな!」
大輔は、てれ笑いで言った。

写真は、大輔の結婚披露宴で高島と一緒に写ったものだった。

紺のタキシード姿の大輔と、赤のカクテルドレス姿の知恵との間で、高島が笑顔で写っていた。

「なぁ、松井・・・これからいろいろ仕事であるかもしれないが、やけになんかなるじゃないぞ」

高島は真顔になった。

「おまえには、知恵さんという大切な人がいるんだ。その人を守って大事にしろよ。俺もそうしていたら、離婚なんかしなかったかもしれないと思ってる」

高島が写真を内ポケットに仕舞い込んだ。

「じゃ、元気でなぁ」
「高島さんこそ、体に気をつけて」

二人は握手をした。

高島の太く厚みのある右手から、優しさと暖かさを大輔は感じた。
その瞬間、大輔の目頭が熱くなっていた。

高島が車に乗り込みエンジンをかけた。

車が駐車場から消えていっても、しばらく大輔は深く礼をしていた。
その間、大輔は、こらえきれないほど涙があふれ出でいた。
 



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