テンポラリー・ジョブ

決断

朝。 
知恵が出勤すると真美が現れた。

真美は、請求書を事務所の女性に渡して、知恵がいる営業室にやってきた。

「おはよう!」
真美は活気ある声で知恵に挨拶をした。

「おはよう」
知恵も挨拶した。

「今日は、朝から暑いわね。梅雨を通りこして、夏がきたみたいだね」

真美の着ているピンクのサテンリボンのワンピースから、はみでる白い手足が、夏らしさを感じさせてくる。

「ところで、その後、どうなの? 大輔さんの会社は、だいぶ落ち着いたんじゃないの?」

「うん、仕事のことはいいみたいなんだけど・・・大ちゃんが尊敬していた上司の人が、今度のことで会社を辞めたの」

「・・・」
「ちょっと、そのことで落ち込んでいるみたいなの」

「そう。でも、ちょうど、いいチャンスじゃないの。今夜でも妊娠のことを大輔さんに告げなさいよ」

真美が、知恵に発破をかけた。

「今、落ち込んでいる時に知恵がおめでたい話をしたら、きっと、大輔さんも喜んでくれて、がんばらなきゃいけない気持ちになるわよ」

真美の言葉には説得力があった。

知恵も真美の言うとおり、今が打ちあけるチャンスだと思った。

「わかった。今夜、大ちゃんに打ちあけるわ」

知恵は、強い意思をもって決めた。
 



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