テンポラリー・ジョブ
「それは、わかっているけど・・・」

真美の言っていることは、知恵に痛く突き刺さる言葉だった。

「でもね・・・いやいやながら仕事をして辛い顔している、大ちゃんの顔なんかみたくないと思ったの・・・それだったら、会社を辞めて好きなエンジニアの仕事を探して欲しいと思ったのよ」

知恵の言葉に、真美もそれ以上は何も言えなかった。

もしも、自分の夫が、大輔と同じ境遇だったら、知恵と同じように夫が辛く仕事に悩む姿は見たくないと素直に思った。

「でも、知恵・・・あまり無理しないで、早く大輔さんに妊娠のこと言いなさいよ。知恵の体だって心配しているんだから・・・」

「わかった」
と、知恵から返事が返ってきて、電話は切れた。



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