テンポラリー・ジョブ
知恵は、しばらく洗面台の前で立ちつくしていた。

知恵は少し涙ぐんでいた。

妊娠のことを告げたら、大輔は笑顔で喜んでくれると思っていた。

自分が思い描いていたこととは、かなり違っていたことにショックだった。

ふと、仕事に向かう時間だと思い、洗面台の鏡で自分の顔を見た。

「がんばらなきゃ・・・」
知恵は気をひきしめるつもりで独り言を言った。

今日は大事な仕事がある日だから、落ち込んでなんかいられない。
鏡に写った自分の顔に言い聞かせた。

大輔とは、また今夜でも話し合おうと思った。

知恵は、仕事モードで家を出て行った。
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