テンポラリー・ジョブ
「面子って? 」

「女性の方のご両親が、足りない結婚資金を出してもいいと言っているんですけど、彼はそんなことはできないと、頑固に拒んでいるんですよ」

「・・・」

「男としたら、わかるような気がします。誰の力も借りずに結婚式をしたいのは、私も男だからそう思うかもしれない。でも、知恵ちゃんは、それよりも相手の女性の気持ちの方を大事にしているんです」
 
「・・・」

「気持ち・・・?」

「子供が出来たら、育児なんかに追われて結婚式どころじゃなくなる。そのうち、彼が結婚式を挙げたい気持ちもなくなっちゃうんじゃないかって・・・」
 
「・・・」
 
「知恵ちゃん、彼女が結婚資金を貯めるために、本業以外にも休日、ここで一生懸命バイトで働いている姿を見ていたから、どうしても結婚式を挙げてもらいたいと思っているんですけどね・・・」
 
大輔は、松崎の話を聞いて、知恵のことが健気に思えてきた。

知恵自信も妊娠して不案や寂しさがあったのに、自分に対しても文句も言わず、いっも笑顔で接してくれたことを思いだした。

そして、困り果てた表情でも一生懸命働いている姿を見ると、大輔は思わず駐車場へ足が運んだ。


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