テンポラリー・ジョブ
大輔は、知恵の顔を見つめた。

「なぁ・・・知恵、さっきはすまなかった」
大輔は、言いにくそうに言った。

「いいのよ。大ちゃんが来てくれなきゃ、雅夫さんと恭子ちゃんとの言い合いも止まらなかったわ。ありがとう」

知恵は、大輔が雅夫と恭子の間に入ったことで、自分の仕事の邪魔をしたのかと気にかけて謝ってくれたと思った。あの時、大輔がいたから、その場が治まったと感謝していた。

大輔は、知恵が勘違いしていると思い、
「それも、あるんだけど・・・今朝のことだよ」

「えっ!」
知恵は真顔になった。

「今朝、つい、怒ってしまって、本当は俺・・・俺、子供ができて、すごく嬉しかったよ。知恵、おめでとう!!」
大輔は満面の笑顔で言った。

「大ちゃん・・・ありがとう!!」
知恵は、嬉しさのあまりに大輔に抱きついた。

二人は見つめ合った。
やがて、大輔の唇がゆっくり知恵の唇と触れていった。
知恵は目を閉じた。
二人は、ひさびさにキスをした 




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