一瞬の風になれ
微か
「大丈夫?明日には退院できるから」
あたしが眠っている間、泣いてたのだろう。
お母さんが目をパンパンに腫らして病室に入って来た
「うん、ありがとう」
あたしの笑顔は虚しく病室に消えていく。
「……これ、井上さんのお母さんが貴方に」
お母さんが大事そうにラッピングされた包み紙をあたしの手のひらにそっとおいた。
すぐに先輩からだってわかる
だって、先輩チョウチョ結び下手だから
包み紙を丁寧に外していくと、白い箱があって、中にはシルバーの指輪が入っていた。
あの日、先輩が着けていたのと同じシルバーの指輪。
また、とめどなく涙が溢れてくる。