訳アリ店長に”恋”しちゃいました♡【番外編追加】
彼女の言葉に息を飲んだ。
今、なんて言った?
もしかして絢は、俺を美容師に引き戻そうと今日来たのか?
だってあの世界は……あの空間は――
あまりにも、絢との思い出があり過ぎる。
「もう一度――」
「絢。俺はもう、ハサミを持たないって決めたんだ」
頼むから、それ以上何も言わないでくれ。
もう俺の事を忘れてくれ、絢。
彼女の手を振り払い、震える手を隠すように食器を手に持って後ろを向く。
「湊叶っ」
「悪いけど、今日は帰ってくれる?」
振り返ることなく、彼女に背を向けたままそう言うと厨房に入った。
絢から見えない位置まで下がると、そのまま大型の冷蔵庫に背を預け
ズルズルと床に尻餅をつく。
「湊叶。私、諦めないから」
そんな彼女の言葉を塞ぐように、両耳を手で塞ぎ頭を抱えこんだ。
お願いだから、帰ってくれ。
俺は、お前の傍にいちゃいけないんだ。