夜の跡
泣きだす月
学校に着くとすぐさますごい騒ぎになる。
三人はまるで王子のように扱われるのだ。
「あの・・・風鈴様これもらっていただけますか?」
かわいらしい小さめの女の子が風鈴に近寄った。
風鈴はゆっくりとそっちを向いてその子が手に持っていた物をひょいっとつまみあげた。
そしてニコッと笑った。
周りにいた人までいっぺんに倒れた。
それを見た楓と流季は、走り出す。
「えっ!ちょっ待って!!」
そう言って走り出す風鈴を見てまわりがハァとため息をついた。


泣きだす月


「おまえあだ名の通りのやつになってんな。微笑みの王子さまだったか?」
「そうそう。なんかそう呼ばれたんだよね~。冷血王子。」
「二人ともいいあだ名だね~。」
いっぺんにきつい視線が楓に向いた。
それにひるむ様子もなく笑顔のままで見つめ返す楓。
周りでは、近づいていいか迷っているように三人を見つめる女の子たち。
その女の子たちを見てため息をつく男子たち。
この教室だけほかの教室とは変わった風景だった。
「おまえは・・・・なんだっけ?あだな。」
「たしかね、完璧王子だったかな?つまんないあだ名なんだよね~。」
二人とも少し視線がうらやましそうに輝いた。
そして、授業のチャイムが鳴って、他と同じ教室の風景となった。

この日の夜信じられない出来事が起きた。
それを見ていたのは、たった3人の少年少女だった。

「何でこんな夜遅くに出かけなきゃならないんだ?」
「面白いところ見つけたんだ。」
「月が二つ見える場所とか言ってたね。」
真夜中に町の裏道のさらに誰も通らないような隙間に入っていく楓と流季と風鈴。
ごみが散乱している中を進んでいく。
フェンスの前にたどり着いた。そして、フェンスを登る。
しばらく何もないところを進んで行く。
そして目の当たりにした。
赤い月と黄色い月が昇っていたのを。
そして、赤い月がまるで泣くようにして赤い大粒の水を地上に落としたのを
反対の黄色い月までが黄色い大粒の水を地上に落としたのを三人だけが見ていた…
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