イタズラなオオカミ
「背が高いからドレスも似合うわね~」
と言ってたマダムの顔色がかわりはじめる。
どれを着せても光太郎は渋い顔をして首を横に振る。
次々と脱ぎ捨てたドレスがたまり、
マネキンのあたしも疲れてきた。
いったいなんでこんな所にいるのか、
いったいなんでこんな事してるのか、
いったいドレスは決まるのか、
薄い水色のオーガンジーのドレス姿のあたしが鏡の中にいる。
これじゃぁ~どう見ても仮装大賞だな。
庶民のあたしにドレスなんて猿にも衣装、
あれ?孫にもだってけっ?
とにかく似合わないんだよ。
けれど光太郎はこのドレスならいいらしい。
一度うなずくとホッとした様子のマダム。
これで終わりかと思っていたら
お次は大きな鏡の前に座らされた。
そこからのあたしもマネキンだった。
髪型がもじゃもじゃ遊ばれたあと
顔も塗ったくられ
出来上がったマネキン、
もとい、別人のようなあたしが鏡の中にいた。
これ、誰?
本気で思ったよ。
あたしを見つめかえすあたしは
まるでお姫様のようにかわいく見えた。