イタズラなオオカミ

「いい加減にしろだと?
誰に向かって口聞いてるんだ」


小さな細い目の男子が前に出てきた。

顔がかなり怖い。

まさかケンカになる??



「バスは公共のものだ。
どこに誰が座ろうと関係ない。
お前専用が欲しければハイヤーでも雇うんだな」


「何言ってるんだ?大釜さんはレスリング高校生日本一だぞ」


「でっ?」


「だから座る権利があるんだ」



モデル男子は、その言葉を鼻で笑った。

そんな事しちゃぁ~
相手がさらに燃えちゃうよ。

レスリング男はむちゃくちゃ怖いよ。

殴られたら
吹っ飛んじゃうくらい太い腕だよぉ~。

間違いなくあたしは心の中で泣いていた。



「お前、バカか。
日本一なら日本一らしく立派な態度をとれよ。
たまにバスに乗ってみたら
下さらないことやってる奴がいてあきれたよ」



モデル男子はあたしの腕を掴んだ。


「降りるぞ」


知らない間にバスは止まっていた。


連れられるままあたしはバスを降りた。






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