叶わない恋-男目線-
それから俺は
心に空いた穴を埋めるように
家族との時間を大切にした。
仕事も前より
何倍も忙しくしてもらった。
それは彼女も同じだったようで…。
もちろん、同じ職場の同じ部。
そして上司と部下の関係な俺らは
何度も顔を合わす。
俺は少しでも彼女の心に残りたいのか…
仕事場でも《沙織》と呼んでしまう。
彼女は《長谷部さん》と呼ぶがな。
あれから1年経った今も
それは変わらない。
手が届く距離にいるのに
伸ばせない辛さ。
目が合った時、
互いに1度は逸らすものの、
もう1度目を合わせ、微笑む彼女を
見たときの幸福感。
学生時代、
みんなが言ってた片想いって
こんな感じだったのか。
なんて考える。
そう思った時に
話しかけてきたコイツ。
桜庭 凛斗ー。