秘密の記憶は恋の契約
私は腕を振り払い、勢いよく顔を上げると、キッと鋭く彼を睨んだ。

すると、目が合った彼は甘く笑って、私の耳に唇を寄せた。

「安心しろ。意地っ張りなとこもかわいいぞ」

「はっ!?だから、違うって・・・!」

「はいはい」

ポンポン、と私の頭を軽くたたくと、綾部くんは笑いながら一人でさっさと歩き始める。


(もう・・・!)


図星だってわかっているけど。

からかわれたのが悔しくて、私は頬を膨らませた。

「・・・ほら」

数歩前に進んだ彼が、私の方に振り返る。

差し出された大きな手。

私はものすごく不服ながらも、思わずその手をつかんでしまった。

「お。素直になったな」

満足気に笑った彼が、私の手を離さないように指を絡めてきゅっと握った。

ドキンと大きく胸が鳴る。

けれどそれを悟られないように、私はまたまた顔を背けた。

「・・・ふん!」

「ぷっ、なんだそれ」

綾部くんが笑う。

なんだかとっても悔しいけれど。

それでもやっぱり幸せで、私のココロはとてもあたたかく満たされた。










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