秘密の記憶は恋の契約
車が走り出して数分。

広い国道に出ると、距離を置いて座っていた私に、綾部くんが何気なく近づいた。

心臓の鼓動が早まってチラリと彼を横目で見ると、綾部くんは当たり前のように私の右手をスッと握った。

「!!」


(綾部くんて・・・なんか手が早い気がする・・・)


手を握るくらいで、なんて思われるかもしれないけれど。

全く躊躇なく伸びてきた手は、今までの経験を物語っているようだった。


(・・・やっぱり、かなり女慣れしてるよね・・・)


握られた手を、どうしようかと考える。

イヤ・・・ではない。

ドキドキする。

でも・・・私は、ついさっき「彼女」になったばかりの存在。


(しかも、かなり強引に・・・)


おとなしく握られたままでいいのか、どうしようかと考えていると。

「やけにおとなしいな」

楽しげに笑う彼の声。

私はピクリと肩を震わせて、「別に」と言って平然を装う。

「手握ったくらいで緊張してんのか。ずいぶんかわいいんだな」
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