秘密の記憶は恋の契約
(平常心、平常心・・・)


気持ちを落ち着かせながらパソコンの電源を入れ、とりあえず、と、メールのチェックを始めるけれど。


(だめだ・・・。全然頭に入ってこない・・・)


横にいる彼を意識せずにはいられなくて、読んでいるメールの内容を、全く理解することが出来ない。


(集中するんだ!集中、集中・・・)


自分に言い聞かせていると、「おはよー!」と言って、右隣の岩下さんが元気に出勤。

私はひとまず頭を休め、岩下さんに向かって「おはようございます」と挨拶を返した。

すると。

「・・・あれ?」

岩下さんが、じーっと私の顔を見る。

「な、何ですか?」

「・・・なんか違う」

「は?」

「なんか急に女っぽくなった。

・・・あ!わかった!好きなヤツでもできたんだろー」

「!?」

「ガハハ」といかにもオジサンなノリで笑い出す岩下さん。

私は突然の指摘に大いに慌て、マウスをくるくるとあちこちに動かした。

「ま、まさか・・・っ!そんなわけないじゃないですか!」

否定する私に、岩下さんは「そうかー?」と言って首を傾げる。

「うーん・・・じゃあ何かなあ・・・。なんか妙に色気出てるんだよなあ・・・」
< 49 / 324 >

この作品をシェア

pagetop