秘密の記憶は恋の契約
「ふふ」っと笑う金田さんの言葉は、確実な未来の予言のようで。

抗いたい気持ちと図星をつかれたような恥ずかしさで、私は頬を熱くした。

「おっ!顔赤い!いいねー、若いって」

「ですねえ」

岩下さんと金田さんは、既婚者同士、そう言って「戻りたい」とかなんとか言っている。


(もう・・・金田さん、わかってるのに・・・)


居心地悪く思っていると、ちょうどよく「おまちどお!」と言っておばちゃんがからあげを届けに来てくれたので、私は二人の話には反応せず、「いただきます」と言って食事を始めた。

「はい!サバ味噌とハンバーグと、野菜炒めもおまちどおー」

他のみんなにも続々と料理が届き、全員が割り箸を割って食べ始めると、会話の内容は、ごはんの感想や仕事の話題に自然と変わっていったけど。

「梅村、土日なんか予定あるのか?」

しばらくして、岩下さんから突然話を振られた私は、一瞬キョトンとしたものの、すぐに「ないですけど」と素直に答える。

「そうかー。じゃあ、その気になる彼をデートにでも誘ったらどうだ?」

「・・・えっ!?」

驚いて、「え」に濁点がついたような声を出してしまった。

「あ!いいじゃないー。そうしなよ!相手の彼も喜ぶかもよ?」

金田さんは岩下案に大賛成。

同意を得た岩下さんは、「だよな!」と言ってウキウキしだす。
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