秘密の記憶は恋の契約
(『好きな彼』ってとこは、ちょっとひっかかるけど・・・)


「めっちゃ岩下さんのお腹に目がいってたよ。美咲ちゃん、ほんとにわかりやすいんだから」

「えっ!?そ、そうでしたか・・・?」

「ははは」と誤魔化す私を、岩下さんは楽しそうに笑い飛ばす。

「いいよ。出てるしね!お腹。奥さんにも子供にも言われてるし。クマみたいでかわいいって、娘たちには好評なんだぞー」


(そうなんだ・・・)


岩下さんの娘さんたちは、確か幼稚園生くらいだったはず。

そのぐらいの年頃だと、大きなお腹は「かわいい」に映るのか。

へんなところで納得して、ふと隣の綾部くんを見ると、うっかり目と目が合ってしまった。

ふっと、意味深な笑みを向けられる。


(『オレはお腹でねーよ』とか思っちゃったりしてるのかな・・・)


余裕たっぷりに見える表情が、私はやっぱり腹立たしい。


(絶対・・・デートになんて誘わないから!)


私は固く決意して、無理矢理仕事の話題に変えた。








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