秘密の記憶は恋の契約
昼休み終了5分前。

ランチを終え会社に戻った私たち4人は、エントランスホールを抜け、5階に行くエレベーターを待っていた。

光る数字を眺めながら、金田さんは突然、「あっ」と小さく声をあげた。

「そうだ、私、総務部に用事があったんだ!」

「ん?・・・あーっ!そういえば!オレもだ!」

続いて、岩下さんまでもがそんなことを言い出した。


(えっ・・・!?二人とも!?)


「じゃあ私たちは2階で・・・美咲ちゃんたちは5階でいいよね?」

「・・・はい」

確認をとってエレベーターに乗ると、金田さんは2階と5階のボタンを押した。


(どうしよう・・・綾部くんと二人きりになっちゃうよ・・・)


それは避けたいと思ったけれど、総務部に用事はないし、用もないのに「ついていきまーす」という女子高生のようなノリは私にはなく。

2階に着いて「じゃ!」と手をあげてエレベーターを降りた金田さんと岩下さんを見送ると、狭い空間には私と綾部くんの二人だけになってしまった。


(落ち着け、落ち着け、あと少し・・・)


動揺していることに気づかれないよう、心に暗示をかけていると、隣から笑いをこらえるような声が聞こえた。
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