秘密の記憶は恋の契約
梅雨入り間近の日曜の朝。

カーテンを開ければ、雲一つなく広がる青空。

向かいの一軒家の庭先には、柿の葉が青々と空をめがけて伸びていた。


(・・・デート日和だな・・・。・・・なんて・・・)


乙女な感情にツッコミを入れながら、キッチンに入って朝食準備。

コーヒーを淹れてクロワッサンをあたためると、大きな口でかぶりついた。


今日は、綾部くんとのデートの日。

悔しいながらもウキウキとして、想像以上の早起きをした。

落ち着かない気持ちの私は、せっせと身支度を整えていく。

クローゼットから、大事に畳んでおいた洋服を取り出して、そろりと袖に腕を通した。

ギンガムチェックのブラウスと、真っ白なコットンのフレアスカート。

昨日そわそわとデパートを訪れた私は、店員のおねえさんに「かわいいですよー」と勧められ、上下揃って買ってしまった。


(うん・・・いいよね)


鏡の前でくるくると回って、何度も全身チェックする。


(これにフラットシューズを合わせれば、OKかな)


綾部くんからは、「鎌倉に行く」というメールをもらっていた。

鎌倉ならお寺巡りだよね、と、たくさん歩くだろうことを予想して、履きやすくて服装に合う靴を、靴箱から出しておく。
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