秘密の記憶は恋の契約
「ああ・・・そういえば。明日からだっけ?おまえが、岩下さんと一緒に『アクアシュガー』と仕事するの」

新しい仕事の取引先。

綾部くんの問いかけに、私はコクリと頷いた。

「営業から聞いた話だと・・・担当の佐々木さん、結構厳しいみたいだな」

「うん。メールの印象でも、すごくキッチリした感じだから。ちょっと・・・不安ではある」

信号待ちでブレーキを踏んだ綾部くんは、弱音を吐いた私の頭にポン、と手を置く。

「大丈夫だよ、おまえなら」

「ん・・・」

「途中までオレも関わってたからな。ちょっと気にはなるけど。

まあ・・・がんばれよ。上手くいったら褒めてやる」

「・・・褒めるだけ?」

冗談っぽく言った私に、綾部くんは軽く笑う。

「なんだ、欲しいものでもあるのか?」

「ううん。ものって言うか・・・高級ディナーに連れてって」

ご褒美があると、私は単純にがんばれる。

ランチでもなんでもいいけれど、一緒に過ごせる時間が欲しいと思った。

「わかった。じゃあ・・・ものすごい高級ディナーに連れて行ってやるから。がんばれよ」

「うん!」

新しい仕事に取り組むときは、緊張で、どうしようもなくなることもあるけれど。

綾部くんとの約束のおかげで、明日が少し楽しみになった。





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