秘密の記憶は恋の契約
「・・・そっか。まあ・・・初デートだしな。嫌われたくないから、食い下がったりはしないけど」

そこで一旦言葉を止めると、彼は私の頬に触れ、自分に向き合うように私の顔を引き寄せた。

「少しは好きになった?オレのこと」

瞳を覗き込まれ、ドキンと大きく胸が鳴る。

けれど私は目をそらし、震える声で返事する。

「わからないよ・・・そんな、一回デートしたくらいで」

うるさく響く心臓を抑えながら、嘘が見破られなければいいなと思った。

「美咲」


(!)


彼の顔が、息がかかるくらいに近づいた。

きっと、このままキスされる。

拒もうと思えば拒める距離。

そして私は。

まだ好きかわからないと、さっき返事をしたばかり。

なのに。

私は目を伏せて、彼のキスを受け入れた。

柔らかな、触れるくらいの軽いキス。

綾部くんとキスをするのは二度目だけれど、今のキスは、初めてのときよりもはるかに甘くてキュンとした。

「・・・じゃあ、早くオレのこと好きになれ。

そうしたら、もっとおまえのことを大切にする。もっと愛してやるから。

だから、早くオレのこと・・・好きになれ」
< 86 / 324 >

この作品をシェア

pagetop