秘密の記憶は恋の契約
そう言って、綾部くんがフロアの入り口に目を向けると。

「まいったなー」

額をかきながら、課長が困惑顔でやってきた。

「梅村ー!」

「はい?」

課長に呼ばれ、私は顔を傾ける。

「アクアシュガーとの仕事、今日からだったよな?」

「はい」

「岩下がなー、今朝ぎっくり腰になっちゃったらしいんだよ」

「えっ!?」


(ぎっくり腰!?)


「梅村に申し訳ないって、這ってでも来ようとしたらしいんだけど・・・。

這うことすらままならないらしくてなー」

「ええっ、そんなに!?」

「うん。だからさ、今日はおまえ一人で行ってもらうことになるんだけど・・・」

「えっ・・・」

昨日、綾部くんと約束をして、がんばろうと意気込んでいた新たな仕事。


(岩下さんも一緒だから、心強いって思ってたのに・・・)


まさか、こんな試練が待っていたとは。

「わかりました」と言いつつも突然の事態に沈んでいると、課長が「うーん」と唸り出す。
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