秘密の記憶は恋の契約
「でもなあ・・・。佐々木さんだし・・・。梅村一人だと、確かにちょっと心配だなー」

「課長、佐々木さんと会ったことあるんですか?」

「うん。前に一度仕事でな。めちゃくちゃキレイな人なんだけど、その分、きついこと言われると本気で恐ろししいっていうか」

「そうなんですか・・・」


(なんか・・・美女にひるんでる課長が、想像できる気がするな・・・)


キレイで仕事がデキる女。

ドラマのようなバリキャリの女性を想像していると、ますます不安が増してきた。

「面識あるしなあ。オレが一緒に行ってやりたいとこだけど・・・」

「今日は会議なんだよなあ」とブツブツ独り言を言う課長。

私を一人で行かせることに、相当不安があるらしい。


(これは・・・優しい親心的なものか・・・はたまた、私が信用されていないのか・・・)


それとも、佐々木さんとやらがそれだけ恐ろしい人なのか。


(・・・)


さらに不安は大増強。

「うーん」と唸りながら、課長はきょろきょろ辺りを見回すと、ある一点に目をとめて、パッと瞳を輝かせた。

「そーだ!綾部!おまえ、急ぎの仕事入ってなかったよな?」

「え?」

突然指名された綾部くんは、驚いた様子で課長を見てから、「ないですけど」と素直に答える。
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