秘密の記憶は恋の契約
「じゃあ、おまえ一緒に行ってやれ。途中まで、おまえもちょっと関わってただろ」

「まあ・・・」

「頼んだぞ!綾部がいっしょなら安心だ!」

そのまま「会議に行ってくる」と行って、課長はフロアを後にする。


(えー・・・)


すごい無理矢理・・・。

綾部くんに目を向けると、なんとも言えない表情でパソコン画面を眺めている。

「あの・・・なんかごめん・・・」

「いや・・・まあ、結構びっくりだけど・・・。梅村のせいじゃないし。いいよ。おまえの力になれるなら」

「!」

一瞬で、顔が火照った。

恥ずかしげもなくこんなことが言えるのは、どういう心の構造だろう。

途端に落ち着かなくなって、挙動不審になる私。

綾部くんはそんな私を見て可笑しそうに笑うと、「簡単に仕事の内容教えて」と言って、私の椅子に身を寄せた。


(・・・近い・・・)


どうしても、胸がドキドキしてしまう。

心臓の音が、彼に聞こえませんように。


(岩下さんがいないのは、やっぱりちょっと不安だけど・・・)


それでも。

綾部くんが代理を引き受けてくれたことが、私はとても嬉しかった。





< 94 / 324 >

この作品をシェア

pagetop