秘密の記憶は恋の契約
「では、担当の者が参りますので、こちらでお待ちください」

アクアシュガーの受付で名前を告げた私たちは、4畳半ほどの小さな部屋に通された。

真っ白な机と椅子、張り紙もない真っ白な壁に囲まれた部屋。

良く言えばシンプルだけど、尋問を受ける空間のようで、私は一層落ち着かなくなる。

「大丈夫だから。そんなに緊張するな」

「う、うん・・・」

気合いを入れたはずなのに。

しっかりしなきゃと思えば思うほど、緊張感は高まっていく。

綾部くんはそんな私を、先ほどからずっと励ましてくれていた。


(綾部くんの方が突然の事態で大変なのに・・・。うう・・・来るなら早く来て・・・)


約束の時間から、10分ほど過ぎていた。

待たされるほどに訪れる緊張。

「ふー、はー」と大きく深呼吸をしていると、廊下を走る足音が聞こえた。

その音が間近で止まると、目の前のドアがガチャリと大きく外に開いた。

「申し訳ありません!お待たせしまして・・・」

頭を下げて部屋に入ってきたのは、凛とした雰囲気の美しい女性と、背が高く、メガネをかけたキレイな顔立ちの男性だった。
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