秘密の記憶は恋の契約
綾部くんの口からも、佐々木さんの名前がポロリとこぼれた。

見つめ合う二人。

いくら鈍感な私でも、この雰囲気は、ただ事じゃないと感じ取らずにいられない。


(こ、これって・・・)


恐ろしくイヤな予感。

不安な気持ちで次の展開を見守っていると、佐々木さんははっとしたように表情を変え、落ち着いた笑顔で名刺を私に差し出した。

「・・・失礼しました。佐々木涼香と申します」


(佐々木、涼香さん・・・)


受け取った名刺を、思わずまじまじ見てしまう。

そんな私のことは気にせずに、佐々木さんは綾部くんにも「お願いします」と言ってすっと名刺を差し出した。

「・・・びっくりした。久しぶりね」

「・・・ええ。そうですね」

意味深な会話。

綾部くんは、ものすごく不機嫌そうな顔をしている。

「・・・あ、こっちはうちの山崎です。今回一緒に担当させていただきますので、よろしくお願いします」

そう言って、佐々木さんは隣に立つメガネの男性を紹介した。

「山崎隼人(はやと)と申します。よろしくお願いします」

落ち着いた雰囲気で、柔らかく微笑む山崎さん。

その優しそうな雰囲気に思わずちょこっと見惚れてから、差し出された名刺を綾部くんと共に受け取った。
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