陽だまりの天使
「じゃあ、佳苗にはどんな男がいいのよ」
合コンのメンバーは直美の友人の友人で、悪い人たちではなかったと思う。
乾杯前からテンションが高く、お酒もどんどん勧められるし、プロフィールから好きな色、映画、下着の色まで根掘り葉掘り、セクハラなのか猥談なのかわからない質問を浴びせられ、質問をする割りには返事にチャチャをいれて、興味本位丸出し。
しかも、老人ホームを利用している人たちに理解がなく、心無い言葉の数々に閉口した。
その時点で、もう帰りたいくらいだったのに、一人がやたらと距離をつめてスキンシップを図って来るのが嫌で逃げ回り、最終的に真帆に助け舟を出してもらうまでしつこく追われた。
「そうね、佳苗は大人しいから。大人で、包容力があって、背が高くて、ちょっとキツイこと言っても引かずに・・・」
「待った。それって、真帆の好み入ってるでしょ。佳苗の相手よ。大体、佳苗の理想は?」
「そうよ、それを聞いて理想に近い男を探さなきゃ」
二人の視線が揃ってこちらを向くが、先日の合コンを振り返って一番思ったことが口に出る。
「えっと、理想というか、一緒にのんびり話をしてくれる人かな」
合コンの時のハイテンションについていけず、急に距離をつめてくることも苦手。
いわゆる人見知りの部類に入るだろう。
理想以前に、相手のことを聞き、知る余裕もなかった。
騒いで楽しいのはいいが、隣の人の声もよく聞こえないくらいの大騒ぎは出会い以前の気がする。
「それだけ?!理想は高く!天まで届くくらいに積みあげて!ほら、イケメンで、楽しくて、頭がよくて、仕事ができて、稼ぎもよくて」
「直美。そんなのは少女マンガにしかいない」
「少女マンガにしかないのは満員電車とか見通しの悪い十字路での出会いのことでしょ。理想はもしかしたらいるかもしれないじゃない」
理想の男と、出会い方論議に参戦しながら、見たことにない相手について盛り上がる。