溺愛結婚!?〜ふたつ目の婚約指輪〜
「きっと、透子が思っているとおり。ふたつ目の婚約指輪」
「ふ、ふたつ目の……」
「そう。ひとつ目は俺がフランスに行ってる間に透子の指にはめるように置いていっただろ?
それはそれでいいんだけど、やっぱりこうして直接渡したかったんだ」
「そんな……だからってふたつ目なんて」
真摯な目と言葉。
きっと、濠は緊張している。
私の目の前に置いた小箱を再び手に取ると、慈しむように何度か表面を撫でている。
大切に扱うその指先はほんの少し震えているようにも見える。
濠が緊張することは滅多にない。
たとえ緊張していても決してそれを見せないのに。
結ばれた口元を見てもそれは明らかで、おまけにその姿は格好良すぎる。
私は今日も、これまで以上に濠が好きになって、震えてしまうのに。
どれだけ私を困らせるんだ、と場違いな想いを巡らせ胸をときめかせていると。
濠は私を強い視線で見つめながら、その小箱の蓋を開けた。
「うわ……きれい」
目の前に輝くダイヤモンド。
ベルベットの台にそっと置かれている指輪。
ふたつ目の婚約指輪だと言っていたけれど、失くすのが怖くて大切にしまっているひとつ目よりも大きいとすぐにわかる。
キラキラ感も半端なものじゃない。