溺愛結婚!?〜ふたつ目の婚約指輪〜
「なんでもないの。それより、今の電話って、雪美さん? それに喬の名前が出たけど何かあった?」
「いや、よくわからないんだ。
このテーブルクロスを手配できるか聞いたら、何故か彼の名前が出て」
「彼って、喬? 雪美さんとどうして……あ、そういえば」
「ん?」
あの日。
授賞式の日。
たまたま用事でアマザンに来ていた喬は会場に入ることができて、お祝いの言葉をくれた。
本来なら、大賞受賞者である私と同じ会社で働いているという理由だけでは招待されることはない。
コンクールの審査員であり、私の上司でもある相模さんの計らいで入ることができたのだ。
同期としていつも私を見守ってくれている喬に私の晴れ舞台を見てもらえることがとてもうれしかった。
そしてそのとき、何故か喬と雪美さんが並び笑い合っている姿を目にした。
濠と同様、アマザンホテルで行われる授賞式では準備はもとより当日の進行を担当する重要な役割を担っている彼女。
私のことが気になって仕事に集中できない濠に振り回されていた彼女の様子は、今でもよく覚えている。
どこまでも私のことを中心に考えて生きている濠に呆れながらも、それがとても心強かったことも。
一生忘れることはない、甘い思い出だ。