溺愛結婚!?〜ふたつ目の婚約指輪〜
それにしても。
雪美さんと喬はあの日初対面だったはずなのに、何故か一緒に立っていた。
雪美さんの気持ちを考えれば、濠が私と一緒にいる姿は見たくないはずで、その日も彼女が悲しい表情を見せるのではないかと気になっていたけれど。
それは濠と一緒にいられる私の思い上がりだったのか、雪美さんが濠のことを気にすることはなく、驚いた。
それどころか、ときおり周囲を見回す視線の多くは喬に向けれらていて、それがかなり気になった。
「雪美さん……もしかしたら」
「え?」
「あ、ううん。なんでもなくて、えっと、それより。テーブルクロス、手配してくれたの?」
雪美さんと喬のことが気になる。
そして、もしかしたら雪美さんは喬を……。
と思いついたけれど、それを濠に言うことには抵抗がある。
長い間濠を想い続けてきた雪美さんの気持ちを軽々しく口にしてはいけない。
もしも喬に対して特別な感情が芽生えているのだとしたら、濠も私もそっと見守らなければいけないと感じている。
もちろん、濠への想いを早く断ち切って、雪美さんにとっての幸せを見つけて欲しいと思うけれど。
私自身が楽になりたいという本音もたしかにあるから。
たとえ雪美さんが次の恋を始めるにしても、それはもう、濠にも私にも関係のないこと。
濠が同期として雪美さんの幸せを願っているように、私も彼女の明るい未来を望むことしかできない。
だから、雪美さんの口から喬の名前が出たとしても、それを勘ぐることも、心配することもしてはいけない。