溺愛結婚!?〜ふたつ目の婚約指輪〜
そんな私の思いを察してくれたのかどうか。
濠はそれ以上何も聞かずにいてくれた。
そして、一瞬、私を強く見つめたあと、ふっと表情を緩めた。
「テーブルクロス三セット、雪美が用意してくれるってさ。あとで事務所に取りにいくから、待ってろ」
「本当? うれしい。だけど、宿泊客でもなのに、いいのかな。ルール違反じゃないの」
「こういうときにルール違反をしてもいい程度には普段真面目に働いてるからいいんだ。
それに、結婚式の晩に泊まるんだから、前倒しってことでいいだろ」
にっこりと笑い、それだけで私の目を奪う濠に、くっと息がとまる。
何年たっても、濠のこの魅力的な男っぷりは健在だ。
「そろそろ料理も運ばれてくるはずだ。
コース料理だから、ゆっくりと食べよう」
「うん。……でも、ここって相当高いんでしょ? 濠の社員割引があるにしても、大丈夫?」
「は? 透子の旦那をなめるなよ。
これでもたまにはこういうナイフとフォークの音しか聞こえない気取った店で食事ができるくらいには、いや、それ以上に稼いでるから安心しろ」
ほんの少し不機嫌な顔。眉を寄せたその顔もまた素敵だ。
また見惚れてしまう。