黄昏と嘘
そんなモモカとチサトが知り合ったのはチサトが大学に合格した年の春。
チサトが1人暮らしを始めるのに家を探していたが、なかなかいいところが見つからず迷っていた頃だった。
親からは「自宅からでも通えるのに」と言われていたが、1講目の授業がある日だと始発の電車に乗っても間に合うかどうか、そんなところだったからどうしても学校の近くで暮らしたかった。
大学の寮も勧められたが聞くところによると規則がかなり厳しいらしくあまり乗り気にはなれなかった。
4年間暮らすのだからあんまり条件を妥協したくない、でも妥協しないと家賃が予定より高くついて生活がきつくなる。
バイトもそうそうできないし、だからと言って無理を言って家を出るのだからあんまり親に泣きつくのも気が引ける。
そんな思いの中、何度も不動産屋に通っているうち、モモカもまた今住んでるところから新しいところへ引っ越すのに物件を探していて、時々2人は会うようになり、いつの間にか顔見知りになった。
そして会って何度目かのとき彼女からルームシェアをしないかと声をかけられたのだ。
学生と社会人だったけれど大学と職場が近い場所にあったせか、容易にふたりの望む物件が見つかった。
お互いだいたいの素性は知っている。
プライベートのところは自分から話す分にはいいけれど、相手のことをむやみには干渉しない。
それでもチサトはモモカの人徳のせいか彼女に対して特に不安に思うこともなかった。
チサトにとってモモカはとてもいいひとであり、いろんなところで気遣いをしてくれ、一緒にいてとても楽だった。
そんなこんなで一緒に暮らしはじめてもう3年目になる。
大学卒業するまでこのままずっと変わらず過ごしていけるものだと思っていた。
……ついさっきまで。