黄昏と嘘
それからどれくらい時間がたったのか・・・。
「・・・なにしてるんだ?」
急にチサトの背後から声がする。
「!!」
どうしよう、先生だ。
チサトは手紙に夢中になっていてアキラが帰ってきたことに気がつかなかった。
どうしよう、泣いているところなど見られたくない、それにいつも帰ってきたとしても夜中のはずなのに。
そんなことを思いながら手元の腕時計を見ると針は午前1時半を差していた。
その時間はアキラが帰ってきていてもおかしくない時間だった。
「・・・えっと、すい・・・ません。
秋物の服、を出してて・・・」
どうせアキラはチサトがどういう状態でいようと気にしないとわかっていたけれど、それでも泣いていたことを悟られないように必死になってアキラに背を向けたまま答える。
どうしてこんな時に限って声をかけたの。
でも彼女が必死になって泣いているところを隠していても肩の震えまでは隠しきれず、それがアキラにとってかえって不自然に見え、チサトの様子がいつもと違う、ということが伝わってしまった。
そのせいなのか、彼はその場から動く気配がなかった。