黄昏と嘘

少ししてアキラがリビングに戻ってきた。
そしてチサトがぼんやりと立っていたのに気づき言った。

「キミ・・・いたのか・・・」

「さっき、帰りました。
先生、あの晩御飯は・・・?」

チサトは自分は外で晩御飯を食べてきたけれどアキラの方はどうしたのか気になってそのことを聞こうとした。
それもあるが今、彼女が思っていたことをアキラに悟られたくない、そんな思いもあって聞いたということもあったかもしれない。

しかしアキラは彼女の質問に答えることもなく別の話をする。

「それよりキミ、タバコを・・・」

「・・・あの、先生、前にも言ったと思いますけど私、カードないから・・・」

そこまで言いかけて、そうだ、この時のためにカードを作ったんだったと思い出す。

「あっ、あの・・・」
「・・・そうだったか・・・?」

今度はふたり同時に言葉を発する。
チサトは慌てて口をつぐむ。
アキラの方はメガネをはずして疲れた表情を少し見せ、目頭を押さえていた。

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