黄昏と嘘
・・・どうやら眠ってしまっていたようだ、そう思い、アキラはソファから起き上がる。
それと同時に、はらり、と床に落ちたブランケット。
誰がかけてくれたのか。
考えるまでもない、チサトがかけていったものだろう。
―――不思議な子だ、そう思った。
普通の学生なら興味本位でアキラに寄ってきてもそのうち離れてゆくのに、彼女は一切、そんなことがなく、しかもいつも彼に向かって真っ直ぐに笑いかけてくる。
いつも笑っている、だから。
そう思っていたからアキラはこの間のチサトの心細くて頼り気ない声にも驚いてしまったのだ。
学生たちからあまりいいように思われていないことは自分自身、自覚していたし、そう意識して過ごしてきたつもりだった。
そしてこれからもずっとひとを避けて過ごしてゆくものだと思っていた。
ひとりのほうが慣れているし、そのほうが何も思い煩うこともないからずっといい、と。
なのに、チサトはそんなアキラの心情を知ってか知らずかいつも彼に笑う。
あのLL教室でのことにしてもアキラは誰もいないと思っていたから余計に驚いてしまい、どうしていいかわからなくてあんな脅すような態度になってしまった。
後からやり過ぎたと、チサトを必要以上に怯えさせてしまったかもしれないと思ったが結局、彼女はそれさえ感じてはいないようだった。