黄昏と嘘



でも―――。
だよね、こんなに早く帰ってくるとかありえないよね。


チサトが帰ってもまだ外は明るく、夕方までにもまだ早い時間。
いくら早く帰ると言ったってこんな時間に帰るわけなどないだろう。
それに彼のことだ、ここには帰らずどこかで時間を過ごすことだって考えられる。
彼女は小さくため息をついた。

自分が早く帰りたいからと思って帰ってきたわけではないので特にやりたいこともない。
それならと、勉強じみたことでもやろうかと思ったものの、それもなんとなく乗り気になれない。
時間をもてあまし、どうしようか考える。
結局、チサトはリビングのソファでゴロゴロしていた。

それでも早く帰ってくるかもしれない、
ソファの上で仰向けになり、天井を見つめながらそんなことを思うだけで彼女の心臓はバクバクと音を立てどうにも落ち着かない。

アキラが早く帰ってきたところでチサトと同じ時間を過ごす、
なんてあり得ない可能性の方が高いのに。
それは十分にわかっていたけれど。

彼女は勢いをつけて上体を起こして座ってみたり、再び横になってみたり、テレビをつけてみたり、クッション抱えてみたり。

それから何気に部屋の中をぐるりと見回してみる。

「キレイに片付いた部屋・・・」

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