黄昏と嘘
なんで、私、ここにいるんだろう。
アキラは身の回りの手伝いをするなら、という条件でチサトをここに住まわせたのだが、チサトは今までこれと言ってなにひとつ、アキラに対して何もしてはいない。
手伝いと言っていたから家事一般でも任せられるのかと思ったが全くそういうこともなかった。
彼の部屋には入らないよう言われているし、リビングにしてもアキラはもちろん、チサト自身もあまり過ごさない場所のせいか、生活感がないくらいに十分にキレイだった。
そして洗濯は全部クリーニングに出すと言ってたし、食事も忙しいからといつも外食だ。
考えたら私、何もやってないじゃない・・・。
本当になんでここにいるの?
それならどうしてアキラはここに住まわせてくれたのだろうか。
でもそれはあの暑い夏の夜を思い出すことですぐに納得できる。
そう、あの状況では仕方のなかったことなのだ。
どういう理由であれ、公共の面前で勢いでとんでもないことを言ってアキラを困惑させ、最後には実家に戻ると勉強に支障を来すと詰め寄った。
チサトはモモカと別れた夜の出来事をゆっくりと思い出す。
そしてアキラに申し訳ないことした、と思うのだがそう思ったとろこで今となってはどうしようもない。
迷惑かけたくないのなら早く、新しい住処をどうにかするか、諦めて実家に帰るか。
今のチサトの選択肢はそれしかなく、新しい案も浮ぶこともなく。
だったら今現在、住まわてくれていることには変わりないのだから、何か少しでもいいからアキラの役に立ちたい。