黄昏と嘘
少しでいいから何か彼の役に立ちたい。
だったら今夜はチャンス、早く帰るのであればご飯でも用意してみようかと考える。
今まで手伝いという手伝いなどしたことがなかったから今夜くらいは・・・。
でも頑張って作ってみてもアキラはどこかで食べてくるかもしれない。
もしそうだとしてもそれで置いておいて明日もチサトが食べればいいだけの話だ。
晩御飯を用意しよう、彼女はソファから立ち上がり、キッチンへと向かう。
チサトはたまに料理をするときにキッチンを使わせてもらっているけれど、いつも簡単で適当なものばかり作っていた。
調理器具などそんなに置いてあるものなど見てもおらず、何があるのかなど気にしたこともなかった。
何があるのだろうとキッチンカウンターの横に片付けているエプロンを身につけながら、改めて確かめてゆくといろんな道具が揃えられているようだった。
アキラはほとんど料理しないと言っていたのに。
でもああ見えて本当はかなりの料理が上手いのかもしれない。
棚の扉を開けても包丁が何種類もあり、ボウル、計量器、鍋・・・、どう使うのかわからない道具もたくさん並べてあった。
そして道具だけでなくたくさんの種類のスパイスも。
これではうっかりいつも作っているような簡単なものなど作れない。
なにか凝った料理を作ったほうがいいかもしれない、とチサトはキッチンスツールに腰掛けて考える。