黄昏と嘘

しばらく考えてみたけれどチサト程度の料理の知識では当然、何も思い浮かばない。
彼女はなにかいい料理はないか検索しようとエプロンのポケットから携帯を取り出す。
冷蔵庫にある食材を確かめ、そして携帯で検索しながら簡単そうで手間がかかったように見える料理はないかと探す。


ん?コック・オー・ヴァン・・・?


ふと目についた料理名。
携帯の画面にはとても美味しそうに煮こまれた鶏肉の画像があった。
スクロールして作り方を確かめる。
鶏肉を赤ワインで煮込む・・・、これならとりあえず材料もある。
料理名が複雑なところ、見た目も凝った料理に見える、でも作り方はそこまで複雑でもなさそうでなんとかなりそうだ。
チサトはその料理をつくることに決めた。

しかし。

そんな彼女の思いも虚しく、料理は想像していたより、うまくはいくことはなかった。
チサトはただ焦げ付いた鍋を見つめながらこの料理を選んだことを後悔していた。


「あはは・・・」


彼女は苦笑するしかなかった。
どうやらブールマニエを作る段階で失敗してしまったようだ。
バターと小麦を相手に悪戦苦闘する。


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