黄昏と嘘
・・・ガチャン。
ちょうどその時、玄関の方でドアの開く音がした。
その音にドキッとしてチサトが時計を見ると針は18時を過ぎていた。
ウソ。
もう帰ってきたんだ。
ヤバイ。
早くしないと先生呆れて外に食べに行くって言うかもしれない。
違う、それよりこの状態なんとかしなきゃ・・・怒られる。
しかし目の前には焦げた鶏肉、汚れたフライパン、赤ワインのこぼれたテーブル、小麦粉が飛び散って汚れてしまった床。
だいたいアキラがここに来るまでに片付けるなんて不可能だ。
落ち着け、チサト。
大丈夫、先生はきっと最初にここに来ることはないから。
自分の部屋に入ってしばらく出てこないから。
心の中でそう叫び落ち着こうと大きく肩を動かし深呼吸した。
そしてとりあえず何とかしないと、とキッチンクロスを手にしたがアキラが帰ってきていると思うだけで何からどう手をつけていいのかわからずどうしよう、と焦るだけだった。