黄昏と嘘
モモカはそんなしどろもどろになっているチサトの気配を背中で感じ取り、振り向いて先に言った。
「ホント……ごめんね。私でできることがあったらなんでも言って?できるだけ協力するから」
ああ、昨日のこと、やっぱり彼女のほうが気にしてて……。
自分から言わなければと思っていたのに結局言葉が上手く出てこず、モモカに気遣わせてしまった。何も言えないのなら追いかけて呼び止めるんじゃなかったとチサトは苦笑する。
「あ、……えっと、違うんです、大丈夫ですよ。うん、なんとかなるってもんです」
こういうのって昨日と同じだ、どうしてもっと相手を納得させることができるような気の利いた言葉が出てこないのだろう。
結局モモカに慰められ、チサトは落ち込むばかりだ。
お互いにそれ以上の言葉が出てこず、チサトはふとカレンダーに目をやる。あとどれくらい時間が残ってるんだろうか。そんなこと思いながら手に持ったマグカップを口元に持ってゆく。
「……あっっつっ!!」
あまりの熱さに声が出てしまう。
そんなチサトにモモカはくすくす笑いながら言った。
「猫舌なんでしょ?気をつけないと」
「あ……あはは……、そうですね……」
チサトはただ笑顔がひきつってわざとらしくいなってないか、気にするだけで精一杯だった。でもモモカはそんなチサトの表情を見逃すこともなかった。
「チサトちゃん……」
「あ、ホント、そんな顔しないでください。大丈夫ですから!」
そう言いながらチサトはモモカの背中を押して言った。
「もう会社、遅れますよっ!いってらっしゃい……!」