黄昏と嘘
「あの、先生。本屋へ・・・」
「なぜだ?
本屋へ行くくらいひとりで十分だろう?」
彼女の言葉を最後まで聞き終わらずにアキラが早口で答える。
途中で答える、ということは最初からチサトが来たことに気付き、話もちゃんと聞こえていたということなのだろう。
やっぱり・・・無視でしたか、そう言うと思った。
チサトは小さく口を歪め不機嫌そうな表情になる。
でも彼女は正直なところアキラと一緒に本を買うというのではなく、ただ買いに行く行為をしたいだけなのだ。
でもそう言うとアキラはきっといい顔しないだろから今度は違う言葉で伝える。
「えっと、・・・他にも気になる本あって。
先生から見て、その、・・・適切な本を選んでほしいんです」
別にそういうのではないけれど、ここまできたらとにかく何か理由をつけてアキラを外に引っ張り出そうとチサトは考える。
「それで一緒に・・・」
「そんなことは人に頼らず自分でなんとかしなさい」
アキラはチサトの方を向くことなく難しそうな分厚い本のページをめくりながら冷静に答える。
そんな彼の態度についチサトは感情的になってしまう。