黄昏と嘘

ふたりで歩きながら、正確にはアキラの後を追いかけるというかたちだが、立ち並ぶ店のショウウインドウに映るふたりをチラッと見て考える。

どうだろうか、兄妹?
まさか友人同士・・・には見えないだろう。
恋人同士・・・とか・・・、

「!!」

そんな言葉が脳裏に浮かびチサトは真っ赤になって照れてしまい、体がかあっとなってゆくのを誤魔化すように頭をがしがしと掻いてしまう。

そんなおかしな態度のチサトにアキラが気づき、立ち止まり、声をかける。

「どうしたんだ?」

「あっ・・・、なんでもないですよ?はい!」

チサトは「恋人同士」なんて考えていることがバレてしまわないように両手を振って慌てて答える。
でもどうやらそんな気分が高揚しているのはチサトだけのようでアキラはそのチサトの返事を最後まで聞くこともなく、またさっさと歩き、見えてきた本屋の中へ入ってゆく。

そんなそっけないアキラだったがチサトは自分に少しでも気遣って立ち止まってくれた、ということが嬉しかった。

そしてやはりアキラは本当はやさしいひとなんだとまた都合良く確信する。



< 175 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop