黄昏と嘘
「はあ、はあ・・・。
先生、別に私を置いて逃げてもよかったんじゃないですか・・・?」
チサトは表情から自分の気持ちを理解されないように視線をそらせる。
そしていろんな意味で息苦しくてやっとの思いで言う彼女の言葉にアキラはあっと気づいたような表情になる。
「あ、そうか・・・。
そうだな・・・」
そして髪をかきあげながらそう答えた。
「もう、・・・先生、足速いから・・・私に合わせて、くださいよ。
こっちは死ぬかと・・・思ったんですから・・・」
気持ちを理解されたくない、そういう思いがありながらもやっぱりアキラの姿も見たい。
もう辺りは暗くなってきているからきっと彼女の表情はわからないだろう。
そう思い、まだ息が切れて肩で息をしながらそっと顔を上げてチサトは言う。
そんなチサトの姿を見てアキラは表情を緩める。
「本当に・・・、死にそうな顔してるな・・・」
「へ・・・?」
なんなんですか、もう。
ひとの気も知らないで……。
暢気そうに答えるアキラにチサトは一言返してやろうと思った時、彼女は自分の目を疑った。
「……!」