黄昏と嘘
秋も深まる頃、大学の木々の色も黄色や赤に染まり、大学祭も近く、いろんなところで学生たちが楽しそうに笑う姿が見られるようになった。
サークルやクラブ、個人での出店、展示、そんな準備で毎日がお祭りのような騒ぎになっている。
先生はこういうのって嫌いなんだろうなあ。
騒がしい賑やかになっていく様子を見つめながらチサトはそんなことを思う。
大きな正門を出てふと立ち止まる。
視線を落とせば自分の影がだいぶ長い。
そんな伸びた影を彼女は見つめる。
このあいだまで暑い、暑いといっていたのに。
そんなことを思っていた頃はこのままこの暑さが永遠に続いて、終わりなど来ないように思ってしまうほどだったのに、今はもう、その暑かった感触も忘れかけている。
「チサト!」
突然、呼ばれた声にチサトが振り向くと、そこにカノコが手を振って立っていた。
「あれ、カノコ、今日、休みって言ってなかったっけ?」
「あー……、ゼミのコに資料のDVDを渡す約束してたの忘れてたから。
それだけ渡して今から帰るところ。
チサトも?」
「あ、うん」
ふたりはお互い歩み寄りながら会話を交わし、側まで来たところで並んで立ち止まる。