黄昏と嘘
それよりも――。
そう、今のチサトはそれどころではないはずだった。
これから住むところをなんとかしないといけないのだから。
なのにいつも気が付けばチサトはアキラのことを考えてしまう。
……でも今はとりあえず新しく住むところのこと、その考えで頭の中をいっぱいにしようとする。
それはアキラのこと、少しでも考えないように。頭の少しのスキも入らないくらいに。
そうすれば少しは自分の気持ちをセーブすることができるかもしれない、少しはこの苦しい気持ちから逃れられるかもしれない、そんな思いから。
そしてチサトはそのままアキラが見えなくなるまで後姿を見つめ、ゆっくりと振り返り小さなため息をついた後、カノコとの約束の場所へゆっくりと向かう。