黄昏と嘘


あの授業から何日かたってるけどまだ辞書が残ってるかな。
もしかしたら学生課に届いてるかもしれないから先にそっちへ寄ったほうがよかったかな……。

厚生棟から研究棟へ入り、階段を駆け上がる。
教室のある3階まで来ると廊下は窓から斜めに夕陽が差し込んでいて、チサトは自分の影を追いかけるように走る。
今日の授業はほとんど終わっているから学生たちはさっきの彼女のように厚生棟に行く人や帰ろうとしている人たちがほとんどで、逆走して研究棟へ行こうとしてるのはチサトくらいだった。
陽が暮れ始めると、真っ暗になるまでが早い。
早く行かなければ、そう思い、急ぐ。

……教室、開いてるかなあ。
やっぱ先に学生課に寄ってったほうがよかったかな。でももうLL教室もそこだし。
ま、いいや。とりあえず教室へ行ってみよう。


そして教室の前までやって来た彼女は立ち止まり、息を整え、ドアに手をやる。

LL教室は西向きの教室で午前は電気をつけないと少し薄暗い教室だが、午後になるとさっきの廊下と同じように陽が入り始める。
30台から40台くらいの机があり、各席はブースで仕切られヘッドフォンが用意されている。
そして後ろの席に座る学生もよく見えるように天井から吊り下げられたモニターが数台設置されている。

チサトはこの教室をいつも3講目で使っており、時間的にちょうど日差しが入る頃。
窓側の席を取ると授業後半になると必ずウトウトと船をこいでしまう。
そうなることがわかっていながらそれでも毎回、窓側の席に座ってしまう。

今の時間はいつも受けている授業の時間よりも今は遅い時間、また教室の雰囲気は少し違って見えるだろうか・・・。


そんなことを思いながらそっとドアを開ける。


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