黄昏と嘘
「どうして・・・?
どうしてそんな言い方するんですか・・・?」
「・・・どうして・・・って、それは・・・」
「・・・私・・・それでも本当は先生のこと・・・」
アキラが彼女のその続きの言葉を遮って言った。
「いい加減にしなさい。
だからさっきも言っただろう?
キミは・・・僕のような人間に関わるべきじゃないんだ」
やりきれない表情を見たチサトの瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。
アキラはその彼女の涙にハッとして過去の自分の愚かさを思い出す。
そう、あの頃もひとりの女性さえ幸せにすることができず泣かせるばかりだった。
追い出す形で彼女が自分のもとを離れ、そして自分の愚かさを憎み、「彼女」がいなくなってやっと自分がやってきたことは間違っていたと理解した。
もっと「彼女」の言葉に耳を傾け、彼女が本当に望むこと、望むもの、それを叶えればよかったのに。
自分が正しいと思い込んだことをただ押し付け、それを理解しない「彼女」に怒りを向けた。
こんなひとの心を持たないような自分と関わる人間はきっとこの先、出会った人、全て、誰もを不幸にしてしまう。
そう思い、やがて人に関心を持つことを止めた。
自分の周りに壁を作りひとを寄せ付けなければ、自分のせいで不幸を思う人間は誰もいなくなる。
なのに。
そう思っていたのに。